平成27年 第1回定例会 予算特別委員会締め括り総括質疑

〇谷村委員
都議会公明党の谷村孝彦でございます。公明党を代表して、締めくくり総括質疑をさせていただきます。
私は昨年も、本委員会の締めくくり総括質疑に立たせていただきました。その際、都知事として初めて都議会で行われた知事の施政方針表明を、僣越ながら、数えてみますと七カ所も引用させていただきました。舛添知事が表明された政治哲学、あるいは政治理念というものは、私どもと全く同じものであるという感動をお伝えさせていただきました。あのときいい忘れましたけれども、舛添学校というものがあるとするならば、あれはそのままテキストになるものだとも思いました。それからちょうど一年がたちました。人の心は移ろいやすいと申しますが、あのときの感動が今はどうなっているかということでございます。
実は今、私は一年前よりも何倍もの感動を持って、この質問席に立たせていただいております。それは、なぜか。それは、一年前に表明された知事の政治哲学、政治理念というものを、まさに行動に移された一年間であったと私は思うからであります。
都政の最前線のご視察は百カ所を超えたと報道されておりました。私の地元の東村山、東大和にもお越しくださり、都民の水がめである多摩湖、村山貯水池や東村山浄水場にもお越しいただきました。その際、お声をかけていただき私も同行させていただきましたが、ご視察の様子は、決して形式的ではない真剣勝負の、時に熱心なご質問もされておりました。
行動なき哲学や実践なき理念などというものはあり得ません。私の座右の銘は、フランスの哲学者ベルクソンの思索人のごとく行動し、行動人のごとく思索するであります。これは別の翻訳では、行動する人間として思考し、思考する人間として行動せよであります。哲学や理念に裏づけられた行動、そして、その行動に裏づけられた哲学や理念、この一年間で、ほとんど全ての都政の最前線に足を運ばれて、その裏づけをもって長期ビジョンも策定されたものと思います。
そこで、まず、ご自身の政治哲学や理念を実際に行動に移された一年間を振り返って、ぜひとも、その手応えのほどをお教えいただければと思います。

〇舛添知事
今、谷村委員から一年前のお話をしていただきましたけれども、私にとりましては、あっという間にこの一年がたったという思いであります。おっしゃっていただきましたように、現場第一だということで見てまいりましたし、本当に、この東京というのは広いので、隅から隅までもっと歩かないといけないなという気持ちは持っております。
それから、ベルクソンの座右の銘とおっしゃいましたけれども、私はやっぱり、アリのように地をはって現場を見る、しかし、やっぱりそれだけではリーダーとしては足りないので、鳥のように空から見て、俯瞰して見るということが非常に大切だということを考えております。
それから、やっぱりいろんな考えの方がおられますから、できるだけ自分とは違う考えの方の皆さん方のご意見も賜るということで、都の審議会、これは霞が関も、政府の方も同じなんですけれども、自分たちの意見に沿うような学者とか有識者を入れることが多いので、私は、半分は、都庁が嫌いでたまらないと、わかりやすくいうと、その批判する人を半分は入れないと。で、最後は私が決断すると、そういうことで、これ、あらゆる審議会も、今見直しを行っているところであります。
そして、就任したときは、もう本当に異常な事態で、私は、この一月、二月に知事選やるというのは、最悪の時期だというのは、予算編成見てもわかると思います。しかし、一年たちまして、今、皆さん方にご審議いただいています予算、やっと一から手がけることができましたし、今ご指摘いただいた長期ビジョンも、これはこれから十年の政策を書いていくということでありましたので、やっとでこれは動いていくと。
私は厚生労働大臣のときの経験からしましても、やはり二年しっかりとその役職についておかないと、人事も予算も仕切れないという感覚を持っております。まだ一年ですから、まだまだそこまでいっておりませんので、これからまた一年間頑張って、さらに任期の四年、全力を挙げてやっていきたいと。
そして、やっぱり政治は結果責任ですから、思索と行動ということのベルクソンの言葉をおっしゃられましたけど、結果が全てでありますので、全力を挙げて都民の皆さんが喜ばれる結果を出したいというふうに思っておりますので、都議会の皆さん方と協力しながら、さらに都政を前に進めていきたいと思っております。

〇谷村委員
大変にありがとうございます。
そして、もう一つ、都市外交であります。
私は昨年の本委員会で、都市外交を国家間のレジリエンス、復元力や回復力となるように、ぜひとも進めていただきたいと提案をさせていただきました。
具体的には、日本と中国の間に三百五十の都市が、日本と韓国の間には百五十に及ぶ都市で友好都市交流、提携があります。東京は、申し上げるまでもなく、中国では北京市と、韓国ではソウル市と友好都市提携がされております。
この全国自治体の旗振り役として、舛添都知事にぜひとも都市外交を率先して進めていただくことによって、結果としてそれが国家間のレジリエンスとなっていく、どんなに時間がかかっても築いていってはどうでしょうかと提案させていただきました。その際、知事は、ぜひそれは東京の都市外交として実現していきたいと思っておりますとご答弁いただきました。これは議事録に残っております。
不明にして私は、どんなに時間がかかってもと申し上げましたが、その三日後には、駐日中国大使が舛添都知事を表敬訪問、ご答弁からちょうど一カ月後の四月二十四日には、北京市から招請を受けてご訪問、さらに、その三カ月後の七月二十三日には、ソウル市からの招請を受けてご訪問されました。中国大使の表敬訪問も含めて、全て十八年ぶりのことであります。
この私との質疑も含めて、知事の一挙手一投足というものは世界から注目をされております。日中両国の三百五十、あるいは日韓の百五十の都市が仮に続かなかったとしても、東京都知事ただお一人が動かれただけで十分にレジリエンスの成果を上げられました。
本委員会の初日に、自民党の高木理事より、第七代東京市長の後藤新平について数字を挙げられて含蓄のあるお話がありました。そこでも触れられておりましたが、関東大震災の後、内務大臣兼帝都復興院総裁として、首都の復興に携わる後藤新平、しかし、その彼の復興計画が大幅に縮小され、予算も削られたわけであります。問題なのは、一体全体、誰が足を引っ張ったのかであります。それは、帝国議会でありました。それでも彼は負けなかった。詳細は高木理事と重複しますので避けますが、彼は負けなかった。ここがすごいわけであります。
古今東西、歴史的な大偉業といわれるものは、そのときはなかなか理解されないことが多いといいます。いや、理解されないどころか、猛烈な反撃や批判を受けることの方が多いわけであります。しかし、東京は今、激しい都市間競争の嵐の真っただ中に身を置いております。競争相手は国内の諸都市ではなく、強力な海外諸都市であり、これに敗れればジャパンパッシング、東京だけではなく、我が国そのものが沈みかねない状況にあります。都市の世紀に入った今日、大都市が抱えるさまざまな諸課題を堂々と乗り越えていく、その都市モデルを東京は描き続けていかなければなりません。
今、韓国での冬季五輪の開催そのものが危ぶまれておりますが、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックは絶対に成功させなければならない。そして、それをランウエー、滑走路にして大きく飛躍していかなくてはならない局面を迎えているわけであります。
この東京のプレゼンス、存在感をさらに上げ続けていくためには、舛添都知事こそが最適任者であると思うこの一年間でございました。あとは、後世の歴史家の判断に委ねるような大偉業を、知事とともに私どもも果たしてまいりたいと念願いたしておりますが、ぜひとも知事のご所見をお伺いしたいと思います。

〇舛添知事
谷村先生には、過分な評価を賜りまして恐縮でございます。
まず、象徴的なことを申し上げますと、イギリスのケンブリッジ公爵殿下、国に行くよりも、まず東京都ということで来られました。そして、これは全世界に発信をされました。雨降っていましたけれども、東京の海のすばらしさ、レインボーブリッジのすばらしさ、そして、伝統と超現代が共存しているすごいまちだっていうのは、世界中の方が来られると。そしてまた、今週金曜日には、デンマークのフレデリック皇太子と同妃殿下が来られます。そして、殿下はIOCの委員でもありまして、やはり船で競技場を視察していただくということで、高島議長とともにご案内をしたいというふうに思っております。
それから、先般、日本に来られましたフランスのファビウス外務大臣、三十年ぶりに会いまして、我々は同じ世代なものですから、三十七歳のときに総理大臣になって、三十年後に外務大臣という経歴なんですけれども、二十数年間、姉妹都市であるフランスのパリを東京都知事が訪れていないということは何たることかということで、大変憤慨をしておられまして、文化の面で、非常にパリに負けているということもあって、一位ロンドン、二位ニューヨーク、三位パリ、そして四位が東京ですので、ぜひパリからも学ぶところがあるというふうに思っております。
そういうことで、東京自身のプレゼンスというのは世界の中で高まっていくということも非常にすばらしいことだというふうに思います。そしてまた、今週は、ニュージーランドの総理大臣が東京都庁に来られます。私は、一国の総理が東京都庁に来られるというのは、今までなかったんではないかというふうに思いますので、このニュージーランドの総理が来られるときには、ラグビーの先進地域でありますし、我々は、二〇一九年、オリンピック・パラリンピックの前の年にラグビーを開催しないといけません。ラグビーというスポーツを通じて、日本とニュージーランド、そして東京が結ばれるというのは非常にすぐれたことであるというふうに思っております。
そしてもう一つ、こういう動き、我々の都市外交というのは、しっかりと今の政府、安倍内閣と歩調を合わせてやっているということでありまして、私は、要するに、国の外交を補強、そして補充すると、そういう役割を結果的に果たせればいいと思っておりますし、今、谷村委員がおっしゃったように、都市間競争やっているわけですから、世界の大都市の中で突出したこのプレゼンスを持つ必要があると思っておりますので、今後とも、世界のVIPが来られたときには、都議会の皆様方とともに、しっかりとおもてなしをしたいと思っております。
そして、場合によっては、総理クラスの方が来られたら、都議会の皆さんにお願いして、この都議会において演説をしてもらうのもいかがかなということを思っておりますので、車の両輪として、都議会と都知事とで、東京都の国際的なプレゼンスを今後とも高めていきたいと思っております。

〇谷村委員
大変すばらしいご答弁、ありがとうございます。
この都政の歴史をさらに開いていくために、私どもも、知事と両輪の議会として取り組ませていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについて何点か質問をさせていただきます。
公明党は、二〇〇三年、平成十五年の第二回定例会の代表質問で、私どもにとりまして先輩の大木田守議員が、地下鉄路線図を取り上げさせていただきました。本会議場でこの地下鉄路線図をばっと上げて取り上げさせていただきました。これは新しくなったものでございますけれども、(パネルを示す)それは、その夜のニュース23で直ちに報道されました。この質問は、私が担当させていただいておりましたので、当時の地下鉄路線図というのは、色だけでこの路線名が描かれておりました。
しかし、これを色覚障害団体の方から、大変にわかりにくいと。普通でもわかりにくい大江戸線の赤、丸ノ内線の赤、だけれども、色覚に障害がある方からも、本当にわからないという、こういうお声をいただきまして、東京大学の伊藤啓准教授の研究グループのアンケート調査からも、路線図の中に路線名を入れたり--入れていただいています。それから、色分けの説明や数字、アルファベットを付記すればわかりやすくなると、そのように提案をさせていただきました。さらには、駅には起点から順番にナンバリングをするとさらにわかりやすいというご提案をいただいた背景があります。
公明党の提案に対し、当時の松尾交通局長は、今後ご指摘の点を踏まえ、早急に路線ごとに路線名を表示するとともに、引き続き必要な改善に取り組んでまいりますと、ご答弁くださいました。交通局さんのお客様視線での反応は本当にすごいと感動をいたしました。
一九七〇年、昭和四十五年から続いていたものを、公明党の質問を受け、東京メトロも調整していただき、一年で改善をしてくださいました。この代表質問の翌年からは、二〇〇四年、平成十六年からは、丸ノ内線はM、大江戸線はE、銀座線はG、路線名も日本語で入れていただいたり、駅にナンバリングもしていただきました。これは、委員会質疑などでも当初から、外国人バリアフリーにもなるんだということで進めていただいたわけでございます。
余談になりますけれども、都庁のエレベーターも、その局に行くには赤色のエレベーター、その局は青色、緑色とありますけれども、色の違いがわからない方からしてみれば、もうそれだけでアウトになります。それで、いろいろな改善をしていただく中で、財務局の方に、そんなに予算がかからないということで、赤色の表示がされているところに平仮名であか、青色のところにはあお、みどりと。赤色のエレベーターに行けばいいんだといわれても、色の違いがわからない方はそれだけで助かるんだということで、そのように今、していただいております。知事と同じく、私ども公明党も、地をはうアリの目を持って、この都政に取り組ませていただいているわけでございます。
三年前の十月に、パナマ大統領が来日された際に、地方議員としてただ一人、そのレセプションにお招きをいただきました。それぐらい東京のプレゼンスは高いわけですけれども、同じく三年前の四月には、天皇陛下の信任状奉呈式前のペルー大使にお会いし、大使のご希望で、ご家族、一家ご一行様を八王子の美術館にご案内させていただいたりしました。
こうした外国人とのおつき合いの中で、意外な本音を指摘されたりします。
今回は何かといいますと、鉄道の切符であります。
自動券売機でイングリッシュのボタンを押すと英語で、ローマ字で駅を選んだり、値段を、購入することができます。しかし、ボタンを押して出てきた切符は、今お手元にあるように、ここにありますように、(パネルを示す)日本語なんです。これ、どちらが高い切符か、ぱっと見ておわかりになりますでしょうか。--なかなかわかりにくいですね。購入したのが都庁前駅ですので、そういわれると、こちらが高いのかなと思うんですけれども、実はこの中井駅の方は、三百三十円、都庁前駅から乗りかえで買って出てくるのがこの切符なんです。都庁から一つ目の駅、乗るには百八十円でこの切符が出る。でも、これ買ったのが正しいのかどうかもわからないですし、それから駅のナンバリングとか、その路線のアルファベット名とも連関をしていないと。
こちらは三百三十円払っているのに、出てきたお金が百五十円分しか出ていないと、あれ、これどうなっているんだっていうことで文句をいおうかというような思いになると。いろいろな案内が多言語表記になったとしても、その購入する切符、これがわからないんだということを大変深刻にお伺いをしたわけであります。
ぜひとも、この二〇二〇年の主役たる東京から、外国人旅行者のバリアフリー対策をより一層進めていただくべきと考えますが、見解をお伺いします。

〇新田交通局長
都営地下鉄では、外国人旅行者にもわかりやすいご案内ができますよう、お話の駅ナンバリングの導入を初め、英語対応が可能なコンシェルジュの配置拡大などを行ってまいりました。
今後は、二〇二〇年大会を見据えまして、多言語対応に係る国や都の新たな指針等に基づき、駅などの案内サインの整備を進めますほか、駅係員の英語力向上のための研修を充実させてまいります。
さらに、外国人の立場に立ったきめ細かなサービスを提供することは重要と認識しており、そのため、今年度新設いたしました外国人モニター等から、実態に合ったニーズを的確に把握してまいります。
ご指摘の自動券売機につきましては、英語以外の言語も加え、購入画面の多言語対応を進めてまいりますほか、切符券面の乗車駅名などにローマ字を併記することなども検討いたしまして、機器のリプレースに合わせ、全駅への設置を目指してまいります。

〇谷村委員
大変にありがとうございます。いつも、交通局の皆様は、お客様目線で取り組んでいただいておりますので、より一層これからもお願いを申し上げます。
次に、東京オリンピック・パラリンピックに向けての二つ目です。文化の力を最大限に発揮していただきたいとの思いで質問させていただきます。
第一に、江戸しぐさの普及についてであります。
ご存じのとおり、江戸しぐさという言葉は昭和になって生まれました。それは江戸時代に商人しぐさ、あるいは繁盛しぐさといわれ、商売繁盛のためのものなので、門外不出となっておりました。これが口承、口から口へ伝えられたものといわれております。これを芝三光氏に弟子入りされた越川禮子氏によって、正しい江戸しぐさを伝承していこうという取り組みとなり、現在、NPO法人江戸しぐさがご活躍されております。
知事も何か番組に出られて、江戸しぐさが話題になったようでございますけれども、先日、このNPO法人の土門道典理事長、鶴見泉事務局長、そして滝川道子理事さんとお会いし、さまざまなご教示をいただきました。二百六十年続いた戦争のない時代に、江戸時代の町人が生んだ異文化受け入れの知恵を現代社会に生かせる今しぐさも推奨され、年に五十回以上の普及講演をされております。テーマとして、私の平成しぐさや、ふるさとしぐさコンクールなども開催され、今の時代に生かす江戸しぐさの振興に取り組まれているわけでございます。
重要なのは、しぐさが大事なのではなくて、そのしぐさが普通に出るようになる心こそ大切だと訴えておられます。
そこでいち早く、この江戸しぐさを副教材に取り上げられ、文科省より先に江戸しぐさに視点を当てられ、他人を思いやる心等、日本人の心を育む教育を進めてこられた都教育委員会のこれまでの取り組みについてお伺いします。

〇比留間教育長
現在、各学校では、教科や道徳、学校行事、部活動など、さまざまな場面で礼節や他人への気遣い等、日本人の心を育む取り組みを行っております。
例えば、ある学校では、代表的な江戸しぐさである傘かしげや肩引きについて学び、道ですれ違うときに、互いに傘を外に傾けたり、肩を後ろに引いてぶつからないようにしたりする、こうした作法を体験的に学習しております。
また、学んだことをもとに、子供たちが学校独自のしぐさを創作し、校内や地域で実践するとともに、その成果を地域の方々に発表する取り組みを行っている学校もございます。
二〇二〇年に向けて、都教育委員会は、江戸しぐさを掲載した都独自の道徳教育教材集を活用いたしますとともに、すぐれた取り組みをホームページで紹介するなどして、各学校への普及啓発を図ってまいります。

〇谷村委員
ありがとうございます。本当に先駆的なお取り組みをいただいていると思います。
日本人の心を育む教育を充実するためには、江戸しぐさだけではなく、そのほか、茶道や華道、民謡や日本舞踊等のように、外部人材の方々をより一層活用するように求めたいと思いますが、都教育委員会の取り組みについてお伺いをいたします。

〇比留間教育長
二〇二〇年を見据え、都教育委員会は、外部人材を積極的に活用して、日本の伝統文化に関する教育の充実に取り組む学校を、小中高校、特別支援学校合わせて二百校を指定いたします。
指定校では、地域の文化、歴史や郷土芸能、我が国の先端技術等の専門的な知識や技能を有する外部人材を、年間を通して導入し、児童生徒が体験活動などで直接指導を受ける機会を充実いたします。
また、児童生徒が都立高校に配置されているJETプログラムによる外国人指導者と交流をし、地域の伝統芸能など、学んだことを紹介する活動を通して、日本のよさを発信する能力や態度を育成してまいります。
こうした外部人材を活用した取り組みを通して、日本人の心を育む教育を一層推進してまいります。

〇谷村委員
大変にありがとうございます。ぜひともよろしくお願いをいたします。
そこで、江戸しぐさについて生活文化局さんに質問いたします。
江戸時代は、北は松前藩から南は薩摩藩まで、三百を数える藩から人が集まる江戸で、言葉も異なり、時に身ぶり手ぶりなどを使って交流し、ともに生きる気遣いとして生み出されたものの一つが江戸しぐさであります。
江戸時代は、他藩の異文化をむしろ積極的に受け入れた時代ともいわれております。これは現代にいいかえれば、多文化共生にも大きな力を発揮するものでもありますし、その根底にあるものは、江戸から東京に引き継がれた豊かな文化であります。
昨今のヘイトスピーチのような特定の民族や異文化などを排斥、侮蔑する思想とは真逆な、崇高な人格を育てるものであります。また、いじめや凶悪な少年犯罪、ストーカーや、また後で触れますけれども、ドメスティック・バイオレンスなどが頻発する現代社会にあって、その解決策に導く活動ともいえるわけであります。
この江戸から東京に引き継がれてきた豊かな文化を通して、時代を超えて伝わる、心を養う文化の力を生かした交流を積極的に進めていただきたいと考えますが、ご見解をお伺いいたします。

〇小林生活文化局長
東京が誰にとっても居心地のよいまちとなるためには、人種、言語、生活習慣などが異なる人々が、文化的な差異を認め、良好な関係を築く多文化共生の考え方を浸透させていく必要がございます。
お話の江戸しぐさなどの文化を媒介としたお互いを思いやる交流の仕方につきましては、国内外との人的交流が活発になる今こそ重要であると考えております。
今後、外国人との交流や世代間のコミュニケーションを育む取り組みなど、文化を通じて人と人とをつなぐ活動を行っている芸術家やNPO、民間団体等を積極的に支援してまいります。

〇谷村委員
ありがとうございます。ぜひとも積極的なご支援をよろしくお願いいたします。
正しい江戸しぐさを現代によみがえらせて、二〇二〇年を迎える、東京オリンピックを迎える、パラリンピックを迎える、江戸リンピック運動を起こしていってはどうかと思っております。
次に、改めて申し上げるまでもなく、この文化には無限大の力が秘められております。例えば、東日本大震災では、多くの被災された人々の傷ついた心を、現地にオーケストラやアーティストが赴き、被災地の人々と交流し、芸術文化活動を行うことで、癒し、支えてこられました。
被災地で開かれた都響のコンサートに私も行かせていただきましたけれども、もう会場内は満席で、一曲ずつ演奏されるたびに、感動の渦が巻き上がっておりました。その光景は今でも忘れることはできません。
今、日本国内はもちろん、世界には相互理解の促進や、問題の共有が必要な社会課題が山積しております。
世界のアーティストたちは、さまざまな社会課題の解決に向け、世界各地の住民や子供たちとの交流事業などを行ってきましたが、今、具体的にどのような交流活動を行っているとのご認識でしょうか、お伺いをいたします。

〇小林生活文化局長
芸術文化の交流が、心のケアを初め、福祉、地域振興などの面で大きな成果をもたらしておりまして、その活動が世界に広がっております。
こうした文化活動は、被災地や紛争地域のような課題を抱えた地域はもとより、少子高齢化に直面する先進国においても活発に行われているところでございます。
また、アーティストやこれを支援する団体が、交流や創造の事例を持ち寄る国際会議が開催されるなど、国際社会における認知度も高まってきております。
このような交流の拠点であるアーティスト・イン・レジデンスは、世界に五百以上存在し、新たな芸術創造の場として機能しているだけでなく、地域の人々との交流の中で、ユニークかつ斬新な創造活動が行われ、地域再生や国際貢献に寄与している例も多くなってきております。

〇谷村委員
思想なき文化、あるいは哲学なき芸術というものもあり得ません。究極は人間生命の真理に向かい、その解決を求めていくものこそが、文化、芸術ともいえます。
こうした文化交流の中核を担うのは、やはり芸術家同士の交流であり、二〇二〇年五輪を控えた東京は、内外の芸術家にとって、活動の飛躍の場とチャンスを提供する場になるべきであると思います。パリやベルリン、ロンドンなど、いわゆる文化都市といわれるまちには、世界中から若手を中心に大勢のアーティストが集まり、交流を深め、新しいアートを生み出しております。
世界一の文化都市を目指す東京が、内外のアーティストたちが交流し、新しい才能を開花させ、革新的な文化を生み出す場所となるよう、都が積極的な施策を展開するべきだと思いますが、知事の見解をお伺いいたします。

〇舛添知事
ただいま生活文化局長が答えましたように、アーティスト・イン・レジデンス、これは非常に、若いアーティストたちの国際交流の場として重要であると思っております。
今おっしゃっていただいたように、ロンドンも、ニューヨークも、パリも、そして先般訪れましたベルリンでも大変そういう活動が盛んであります。そこで新しい文化交流、新しい芸術作品が生み出されているということで、やはり二〇二〇年を目指して、さらにその後を目指して、こういう創造的な文化活動ができる拠点をぜひやりたいというふうに思っております。それで、そのときに、空き店舗を活用するとか、古い民家の活用、こういうことも考えていますし、それから自治体、企業、NPO等と連携した取り組みの中で、また地域との交流も生まれると思っています。
私は、比較的スペースのあります多摩地域にこういうものをつくるのはいかがかなと思っていますとともに、何度も話題に、この議会でもやりましたアール・ブリュットの国際的な拠点を多摩地域につくるのはいかがかということで、既に調査検討を始めさせているところであります。
今後、この東京というのが世界に開かれて世界に向かって発信するというのは、世界中のアーティストがそういう発信の機能を持っているわけですから、東京を若手芸術家が世界中から目指してやってくる文化的な拠点として、この力を蓄えていきたいというふうに思っておりますので、節目節目でまた都議会の皆様方にご相談した上で、大きな文化の拠点をつくっていきたいと思っております。

〇谷村委員
ありがとうございます。ぜひとも推進を、また多摩地域に、よろしくお願いをいたします。ありがとうございます。
次に、東京五輪に向けての三つ目ですが、世界に誇れる東京水の発信について質問をいたします。
先ほども申し上げましたが、昨年八月に、舛添知事には多摩湖、村山貯水池と東村山浄水場の二つの施設をご視察いただきました。ちなみに東村山浄水場だけで、単独で十七市、他の浄水場と混合で十三区二市、合計十三区十九市、区市の六五%に当たりますけれども、その地域に東村山浄水場から安全でおいしいお水が供給されております。東村山に足を向けて寝てはいけません。
そこで、その技術の東京水、これペットボトルでありますけれども、(実物を示す)知事、この違いおわかりになりますか。(舛添知事「いや、ちょっとよく……」と呼ぶ)ないですよね、おわかりにならないと思います。これ実は、採水地が小さく書かれているんです。こっちが金町浄水場、こっちは東村山浄水場、そのほかにも、三郷、朝霞というふうになっているんですけれども、浄水場が地域のシンボルとして身近に感じられるよう、このペットボトルの「東京水」のラベルに、採水した浄水場名を、例えば、東村山であれば東村山浄水場と、こういうふうに大きく表示をしていただいたりすると、浄水場への理解もより深まるのではと考えております。そもそものペットボトルの「東京水」の利用目的とあわせて、この採水所の表示、どうかご答弁をよろしくお願いいたします。

〇吉田水道局長
ペットボトル「東京水」は、お客様に高度浄水処理した水を手軽に飲んでいただき、生活に欠かせない水道水の安全性やおいしさを実感していただくことを目的にPR用として製造しているもので、主に、水道何でも相談などの地域イベントや水道施設見学会などの際に活用しております。
お話のように、水道水の安全性やおいしさだけでなく、その水がどこの浄水場でつくられているのかをお伝えすることは、地域住民の方々を初め、広くお客様に水道事業への理解を一層深めていただく上で効果的でございます。
そのため、今後は、ラベルに採水しました浄水場名を大きく表示したペットボトル「東京水」を製造し、地域イベントなどで活用してまいります。

〇谷村委員
ありがとうございます。
オリンピック・パラリンピックに向けて、東京水を大きくアピールをしていただき、そして東村山のアピールにもなりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
続きまして、去る二月十日に東京体育館で日本共産党の演説会が行われました。その際、志位和夫委員長が、十七人に躍進した日本共産党都議団が区市町村議団と力を合わせ、現実政治を動かすすばらしい働きをしているという三つの事例を紹介されております。
一つ目は、認可保育所建設が大きく前進していることです。この四年間で、全都で二百七十九カ所ふやすことができました。これは、それ以前の四年間の約三倍のペースです。二つ目が、特別養護老人ホームは、この四年間で六十一カ所ふえて、これも約二倍と述べられております。これ、志位委員長の言葉を今引かせていただきました。
あたかも認可保育所や特別養護老人ホームがふえたのは、共産党が都議会で十七人に躍進したからふえたといわんばかりでございますけれども、整備が加速されてきたのは、多様な保育ニーズを的確に捉え、特別養護老人ホームなどの施設を含む介護サービス基盤を着実に整備してきたことによるものと思いますが、これまでの都の対策についてお伺いいたします。

〇梶原福祉保健局長
都はこれまで、区市町村が地域の実情に応じて、認可保育所、認証保育所、家庭的保育など多様な保育サービスを拡充できるよう、区市町村や事業者に対する負担軽減策を独自に実施してまいりました。
また、特別養護老人ホームの整備を進めるため、整備率が低い地域の補助単価を最大で一・五倍に加算してまいりました。さらに今年度から、保育所整備費補助を株式会社やNPO法人等に拡大するほか、特別養護老人ホームの建築価格高騰に対応する加算も実施しております。
また、施設用地を確保するため、未利用都有地の減額貸付や定期借地権の一時金への補助などを実施しており、今年度からは都有地貸付料の減額率を拡大し、国有地、民有地の賃借料補助を創設するなど、新たな支援策も講じております。

〇谷村委員
ただいまのご答弁のように、認可保育所一つ、特養ホーム一つをつくるに当たっても、ありとあらゆる施策を打っていただいて、可能となったものであります。
共産党のように、議場でつくれふやせと主張したからといって、あるいは共産党系の団体が何かしたからといってふえるものではないということを、今明快にご答弁していただきました。都のありとあらゆる努力のたまもので、認可保育所の設立も、特養ホームの設立も進んでいるわけであります。
さらに、都では、認証保育所や保育ママなど、地域のニーズに応じて多様な保育サービスが拡充できるよう、区市町村を支援してきました。共産党はご存じないようですが、認証保育所は平成二十七年三月一日現在、七百二十七カ所、定員は二万四千人を超えております。認証保育所の制度がスタートして、わずか十数年で、こんなにふえたのはなぜか。それは、都民ニーズに合致したからであります。待機児童解消に向けた大きな役割を担っております。
繰り返しになりますが、この間、認可保育所だけがふえたわけではありません。知事は、ご就任以来、選挙時の公約である保育所待機児童の解消と、特別養護老人ホームの増設に向けて、長期ビジョンで具体的な目標を掲げるとともに、地域のさまざまなニーズに応じた施策を展開してこられました。これは公明党の主張とも一致するものであり、全力で応援をしてまいりました。
そこで、改めて、待機児童解消や、特養等の介護基盤整備に取り組む知事の決意をお伺いいたします。

〇舛添知事
東京を世界一の福祉先進都市にする、これは私の公約でございまして、この公約を実現するために、長期ビジョンでは、平成二十九年度末までに保育サービスを四万人分ふやすことを目標に定めました。また介護基盤につきましても、平成三十七年度末までに、特養を定員六万人、それから認知症高齢者グループホームを定員二万人分にふやす目標を掲げ、具体的な工程表をお示ししたところでございます。
また、整備を加速させるため、機動的に補正予算を編成し、保育所や特別養護老人ホームの新たな整備促進策を講じてまいりました。来年度は、整備促進策に加えまして、保育士、介護職員の確保定着に向けましたキャリアパスの仕組みの構築など、さらなる支援策も創設いたします。
今後とも、安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまち、また、高齢者が地域で安心して暮らせる社会、これを実現するために、保育サービスや介護サービスのさらなる基盤整備に全力で取り組んでまいる決意でございます。

〇谷村委員
ありがとうございます。舛添知事のもとに、どんどん福祉世界一の都市東京を目指してまいりたいと思います。
繰り返しますが、共産党はというよりも、志位委員長は、共産党都議団が十七人になったことで、この四年間でその前の四年間と比較して認可保育所が三倍、特養ホームは二倍増設したと宣伝されておりましたが、そもそもこの四年間といっても、共産党が十七議席になったのは、たかだか二年前のことであります。そして、関係する予算に十七人の議席で関与されたのは四年分ではなく、平成二十六年度予算の一年分だけであります。しかも残念なことに、その関係予算にも思い切り反対されております。
都知事選で共産党が推薦した宇都宮健児さんが落選した直後ともあって、いつものように頭に血が上っておられたのかもしれません。
また、まさか一年後に志位委員長からお褒めの言葉をいただくとは……(発言する者あり)上っているじゃない。お褒めの言葉をいただくとは想像もつかなかったのでしょう。平成二十六年度予算案の採決前の討論では、いつものいろいろな嫌味をさんざんいって、思いっ切り認可保育所や特養ホーム設置のための予算案に反対されております。さすがにこの志位委員長の論理はまずいと思われたのでしょう。三週間後の「しんぶん赤旗」に、都議会第三党共産党都議団の実績という記事を二日間にわたって掲載されておりますが、ここでは舛添知事の長期ビジョンのつまみ食いだけして、四年間の認可保育所三倍とか、特養ホーム二倍の表現は既に使われておりませんでした。
先ほどの志位委員長のお褒めの言葉の三つ目は省略してしまいましたが、内容は非正規雇用の正社員化であります。これはさすがの志位委員長も演説の中で、舛添知事の長期ビジョンのつまみ食いをするしかなかったようであります。
日本共産党の幹部会委員長たるものが演説会で使い、翌日の「しんぶん赤旗」でも使った表現がわずか三週間後には「しんぶん赤旗」でさえも使用できなかったという事実を申し添えて次の質問に移ります。
平成二十七年度予算では、金額、構成比ともに、福祉と保健の予算は過去最大のものとなっております。これは公明党と舛添都知事のさらに福祉を重視していくという同じ政治理念で都政を進めている象徴ということができます。
これからの福祉のあり方は、セーフティーネットをより強固にしていくことも大事ですが、一たびネットにかかっても、またもとに飛び上がることができるトランポリン型を進めていかなくてはなりません。そうでないと、給付のわなといわれるベネフィットトラップに陥ってしまい、それによって真に必要とされるセーフティーネットの維持それ自体が困難になるとの指摘もあるからであります。そのために重要な福祉施策は、何といっても住宅と就労であります。
そこで、まず、住宅支援についてであります。少子高齢社会を迎えつつある住宅政策として、高齢者の居住の安定については、サービスつき高齢者向け住宅の供給促進、民間賃貸住宅への円滑な入居支援を進めております。一方、少子化への対応を考えると、東京を初めとする大都市圏を中心に、住宅事情が厳しい地域で出生率が低いという傾向が見られます。子育て支援策の中で、とりわけニーズが高いのは、賃貸住宅に住む若年世帯への支援であります。
都は、少子化対策として、都内で増加している空き家の活用を含め、子育て世代に配慮した住宅政策上の取り組みを強化すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

〇安井都市整備局長
少子高齢化が進行していく中で、住宅政策において子育てに配慮した取り組みを進めていくことが重要でございます。
このため、都は来年度から、空き家の実態調査や、その活用を含めた総合的な計画の作成、また、民間が賃貸住宅を子育て世帯などに向け改修する場合の区市町村の取り組みに対しまして財政支援を行ってまいります。
こうした支援に加えまして、新たに子育てに適した広さや安全性などを備えた住宅を認定する制度を創設するとともに、区市町村と連携いたしまして、賃貸住宅の共用部分の整備費について助成し、子育て世帯に配慮した住宅の普及を図ってまいります。

〇谷村委員
大変に積極的なご答弁をいただきました。ぜひとも着実に進めていただきたいと思います。
都営住宅と並ぶ公社住宅についても、この若い子育て世帯向けの住宅としてのニーズに応えて、子育て支援に当たって公社住宅も一定の役割を果たすべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。

〇安井都市整備局長
公社は、地方住宅供給公社法に基づきまして、中堅所得者層に対しまして一般賃貸住宅を供給しており、家賃については、周辺の家賃相場と均衡を失しないよう定めることを原則としております。
その上で、低所得者のひとり親世帯に対しまして家賃が引き上げになる場合には特別減額措置を講じているほか、子育て世帯などを対象として優先申込制度などを実施しております。
来年度からは、空き住戸を活用して、子育て世帯などの居住ニーズを踏まえた間取りの変更や内装、設備の改修などを目的とする住宅の改善をスタートさせます。
今後とも、公社は、子育て世帯を含む住宅に困窮する世帯に十分配慮しながら、安心して暮らすことのできる環境整備に努めていくこととしております。

〇谷村委員
重ねて積極的かつ具体的な取り組みへのご答弁をいただきました。ぜひともよろしくお願いを申し上げます。
ベネフィットトラップに陥らないためのトランポリン型施策の推進に向けて、住宅と並んで重要なのが就労支援であります。家族の介護は、誰にも、ある日突然降りかかる可能性があり、しかも、先の見えない長期間に及ぶ場合もあります。とりわけ仕事を持つ方にとっては、やむを得ず離職を選択する方もふえている状況にあります。
この仕事と介護の両立の問題は、ますます深刻化することが懸念されており、都議会公明党も都に再三にわたり積極的な対応を求めてまいりました。都は今年度、我が党の要請を受け特別調査を行いましたが、そこで、まず、中小企業で働く従業員の方々を対象に行われた特別調査の結果についてお伺いをいたします。

〇山本産業労働局長
都が今年度、都内中小企業を対象に実施をいたしました仕事と介護の両立に関する特別調査では、従業員の実態やニーズを把握するため、介護経験のある方もしくは今後介護を行う可能性の高い方などに対しまして、両立支援に関して制度の認知状況や、感じている不安などについて尋ねたところでございます。
調査結果では、勤務先の制度の内容や存在自体を知らないとした方が約六割となっておりました。
また、両立に対しての不安は約八割が感じるとしておりまして、その内容としては、介護の期間や負担等の見通しが立てにくいということのほか、代替要員がいないため仕事を休みづらいことや、介護休業中の収入減を挙げた方が上位を占めております。

〇谷村委員
今のご答弁にもありましたように、特別調査によって大変に重要な課題が浮き彫りとなりました。離職することなく安心して介護をするには、必要な情報を的確に得るということが重要だといえます。
こうした情報の提供も含め、調査結果で把握された中小企業で働く方々の不安の解消に向け支援を進めていく必要があると考えますが、来年度の具体的な事業展開についてお伺いをいたします。

〇山本産業労働局長
調査で把握されました状況も踏まえ、都は来年度、中小企業で働く方々の仕事と介護の両立支援を拡充いたします。
具体的には、情報不足による不安解消を図るため、仕事と介護の両立に関する専用サイトを開設いたしまして、例えば休業制度や休業中の給付金、働きながら在宅介護をしている事例、デイサービスなどの各種サービスといった情報を提供してまいります。
また、ワークライフバランス推進のための支援制度に代替要員の人件費補助や企業への奨励金を加えまして、従業員が介護休業を取得しやすくしてまいりたいと考えております。
さらに、介護期間中の生活の安定に向けまして、中小企業従業員融資の介護融資の利用対象に、介護休業中の方に加えまして、要介護者を親族に持つ方にまで広げるなど、制度の充実を図ってまいります。

〇谷村委員
ぜひともよろしくお願いを申し上げます。
次に、就業に向けた資格取得のための支援について質問いたします。
何らかのご事情によって離職された方が、再就職に必要な能力を身につけ、資格を得ることができるよう支援していくことは、まさにトランポリン施策としては大変に重要であります。
都は、離職者向けの再就職訓練を民間の専門学校などに委託して実施しております。これはリーマンショック後の雇用情勢が急激に悪化した時期に、国からの委託訓練を受けた緊急対策として開始したもので、民間の教育訓練機関を活用して職業訓練の実施規模を大幅にふやしております。
この中では、先ほども仕事との両立で触れた介護の分野で中核的な存在となる介護福祉士の養成科も設けられております。この介護福祉士の養成科の実施概要と実施規模についてお伺いをいたします。

〇山本産業労働局長
公共職業訓練の離職者等再就職訓練事業は、国からの委託を受けまして、都が具体的な訓練コースを設定した上で、民間の教育訓練機関を活用しまして、離職者向けの職業訓練を実施するものでございます。平成二十一年度に開始をしたところでございます。
このうち介護福祉士養成科につきましては、介護福祉士の資格取得を目指す方を対象といたします二年間の訓練コースでございまして、厚生労働省が指定する介護福祉士養成施設に委託をして実施しております。
実施規模は、平成二十六年度入校生で十八校、約四百五十名でございます。

〇谷村委員
再就職に向けた資格取得を都がしっかりと後押しすることは大切なことであります。また、民間の訓練機関を活用するという点につきましても、これは評価できるものであります。
しかし、貴重な税金を使って再就職を応援するこの制度に便乗して、あるいは制度を悪用して、特定政党の政治的なイデオロギーを教え込むために利用されているとなると、話は全く違ってまいります。
先般、私どものもとに、受講者の都民の方から実態が報告され、果たしてこれでいいのかという苦情が寄せられました。その学校は、都からの委託を受けて訓練校として介護福祉士養成を行っている十八校のうちの一つであります。足立区にある千住介護福祉専門学校で、同校は学校法人東都医療福祉学院が経営しておりますが、学校法人の理事長は、日本共産党から推薦を受けて二年間区長を務め、都知事選にも出て、共産党員として活躍されている吉田万三氏であります。
同校の卒業証書には、校長として吉田氏の名前が当然表記されております。これがその証書でございます。問題なのは、その受講者の報告によると、実際に、この学校で授業中に教材として「しんぶん赤旗」が使われたり、議員の名前を記す欄が設けられている署名用紙が配られたりして、政治的な署名集めがされたということであります。
日本共産党は、職業訓練の民間委託の拡大を批判しております。そうしておいて一方では、民間委託訓練を共産党と関係が深い学校法人の経営に利用し、さらには、就職を目指して真摯に勉強に励む方をみずからのイデオロギーに引き寄せようとしております。
税金を使って行われる職業訓練で、特定の党派の政治的イデオロギーが教えられていてよいわけがありません。都には、これまで苦情が上がっていないのでしょうか、お伺いをいたします。

〇山本産業労働局長
公共職業訓練は、職業能力開発促進法に基づきまして、国及び都道府県が行うものでございます。当然のことながら、政治的な中立性が求められるというふうに考えております。
お話の専門学校につきましては、この訓練の受講申し込み窓口でありますハローワークを通じまして、昨年の一月に苦情が寄せられているという経緯がございます。都は、直ちに調査を行いまして、不適正な内容の是正を求めたところでございます。
学校からは、昨年の三月に事実をおおむね認め、是正をする旨の報告がございまして、その後、都は定期的に現地調査を行うなど、再発防止のための指導を行ってきたところでございます。

〇谷村委員
苦情に対して都が直ちに調査を行い、是正を図ったとのことでありますけれども、都の良識的な指導をあざ笑うかのような実態が、今も形を変えて継続しているようであります。
この学校のホームページを見ますと、二年間のコースで一人二百万円程度の費用がかかるようですが、職業訓練については、全額、国が都を経由して委託費として支払われているもので、無料で受けられるとのことであります。
先日までこの学校の受講者であった都民の方から、政治的に極めて偏った内容の本を参考テキストとして購入させられたといった苦情が、現在でもまだ寄せられております。これがその本であります。同校の教員の一人が執筆者にもなっております。
この本では、年越し派遣村や貧困というキーワードから、首都圏青年ユニオンの活動の紹介に結びつけたり、資本主義という社会体制が貧困を生む原因と主張したり、階級闘争の必要性を訴え、労働者政党の役割を強調したり、結びにマルクスやエンゲルスを引き合いに出したりするなど、明らかに特定のイデオロギーや政治スタンスを疑わせる内容となっております。
さらには、授業の中で、現政権に対する批判や、特定政党の活動を宣伝するかのような政治的な発言が、たびたび行われているとのことです。
介護福祉士の養成講座の中には、技能だけではなく、現代社会などの講義も含まれていますが、公共職業訓練として行う以上は、こうした講義のときこそ政治的な偏りがないように十分留意して行うべきであります。
学校が確信犯で行っている可能性もあり、都の対応は甘かったのではないでしょうか。徹底的に調べた上で、断固とした処置をとるべきと考えますが、見解をお伺いします。

〇山本産業労働局長
都は、昨年に苦情が発生以来、定期的な現地調査を行うなど、公共職業訓練の適切な実施に向けまして当該専門学校に対する指導を行ってきたところでございます。
こうした取り組みにもかかわらず、お話のように、その後も苦情が出されていることにつきましては、そのまま放置をすることはできないと思っておりますので、是正指導後においても、不適正な行為が行われていないかということにつきまして直ちに調査を行い、訓練の適切な実施に向けて取り組んでまいります。

〇谷村委員
実態解明に向けて徹底的な調査を行い、都民の理解が得られる、そして、受講生に迷惑がかからない適切な事業執行を求めて、次の質問に移ります。
さきに少し触れましたが、配偶者暴力対策について質問いたします。
先週、警察庁から発表された配偶者からの暴力事案等の対応状況によりますと、配偶者暴力等の認知件数は前年比約二割増しの五万九千件に上り、配偶者暴力防止法施行以後最多となり、さらに、殺人による検挙数が前年比の約七割増の百二件と、悲惨な事件は後を絶っておりません。
被害者が抱える悩みや、その解決策は、各人各様であります。また、心や体に深い傷を負い、経済的にも困難を抱える被害者を救済するには、長期間にわたる息の長い取り組みが必要であります。それには、行政の力だけでなく、NPO等の民間支援団体の役割が重要であります。こうした民間支援団体は、一つ一つは極めて規模が小さく、財政状況も厳しい現状にあります。
そこで、DV被害者の救済のためには、支援に携わる関係機関がしっかりと連携することが必要でありますが、きめ細かな支援を担う民間支援団体との連携を強化して、被害者に行き届いた支援を行うべきと考えますが、見解をお伺いします。

〇小林生活文化局長
配偶者暴力被害者の救済には、被害者の置かれている状況や課題に応じ、関係機関が密接に連携した継続的な支援が重要であります。
これまで都は、民間支援団体を含めたさまざまな関係機関で構成する東京都配偶者暴力対策ネットワーク会議の開催や、被害者の不安軽減のための同行支援など、民間団体が行う活動に対する助成を行ってまいりました。
被害者に、より行き届いた支援を行うには、安全確保や心理的援助、就労支援など、異なる強みを持つ複数の民間団体が連携することが有効であると考えております。
このため、来年度、都は、これらの団体の連携が円滑に行えるよう、コーディネートに必要な経費や連携して取り組む支援を新たに助成対象に加え、被害者ニーズに合わせた切れ目のない支援を行ってまいります。

〇谷村委員
DV被害者を確実に救済するためには、身近な相談窓口である市区町村の体制強化が重要でありますが、配偶者暴力相談支援センター機能を有している市区町村は現在七区にとどまっており、相談体制が万全とはいいがたい状況にあります。
そこで、都は、市区町村の配偶者暴力相談支援センター機能整備に向けた支援をしっかりと行うとともに、まずは、都みずからも相談体制を拡充し、一人でも多くのDV被害者を救済すべきと考えますが、見解をお伺いします。

〇小林生活文化局長
都はこれまで、都民にとって身近な相談窓口である市区町村に対して、多様な研修を通じた相談員の育成を図るとともに、今年度は、新たに十の市区を直接訪問し、地域の実態を把握した上で課題に応じた助言や人材育成を行ってまいりました。来年度は、二十の市区町村にその規模を広げ、支援を拡充してまいります。
さらに、相談ニーズの増加や事例の複雑化、困難化に対応できるよう、来年度、東京ウィメンズプラザの相談員を増員し、電話回線をふやすことで、相談体制の強化を図り、被害者の救済に積極的に取り組んでまいります。

〇谷村委員
今後とも、関係機関との連携を図り、都がリーダーシップをとることで、配偶者暴力被害者に確かな安心を与えることを強く要望し、次の質問に移らせていただきます。
次は、下水道事業におけるエネルギー利用についてであります。
以前、私は決算特別委員会で、芝浦水再生センターに隣接したソニー本社ビルにおける下水処理水を活用した熱利用事業の取り組みについて質問した際に、今後も工夫を凝らした取り組みの拡大を要望させていただいたことがあります。
国土交通省の試算では、下水熱の全国のエネルギーポテンシャルは、実に一般家庭約一千五百万世帯の年間冷暖房熱源に相当するとのことであり、これらをまず東京から有効に活用することは、地球温暖化防止やエネルギー対策の観点から大変に意義あるものであると思います。
そこで、下水の持つ熱エネルギーの一層の利用拡大を図っていただきたいと思いますが、ご見解をお伺いいたします。

〇松田下水道局長
下水熱の利用につきましては、下水道の施設内での利用に加えまして、ポンプ所や水再生センターに近接する文京区後楽地区や江東区新砂地区における地域冷暖房の熱源として供給をしております。
また、芝浦水再生センターの上部に建設された業務商業ビルにおいても、冷暖房の熱源として利用いたします。
一方、下水熱の利用においては、熱交換のためのプラント設備などの初期投資が大きく、相当量の下水の水量及び一定規模で安定的な需要などの条件をクリアする必要があり、実施できる場所は限られているのが実情でございます。
現在、下水道が持つ潜在的エネルギーを生かすため、最新の技術の導入により初期投資を抑制する仕組みを検討しておりまして、今後とも、利用の拡大に向けて積極的に取り組んでまいります。

〇谷村委員
ありがとうございます。
一方で、下水道事業には多くのエネルギーが必要であり、下水汚泥を処理する工程で最もエネルギーを消費するとのことであります。
下水道局は、スマートプラン二〇一四において、下水道事業で使用するエネルギーのうち再生可能エネルギー等が占める割合を平成三十六年度までに二〇%以上にする目標を立てておられますが、この達成には汚泥処理に係るエネルギー対策を進めることが有効ではないでしょうか。
そこで、下水道局は、今後、汚泥処理におけるエネルギー対策の強化をしっかりと図るべきと考えます。ご見解をお伺いいたします。

〇松田下水道局長
下水道局では、効果的な省エネ対策のため、汚泥の水分量を一層削減して焼却時の補助燃料を不要にする、新たな汚泥脱水機の開発を進めております。また、再生可能エネルギー拡大のため、これまで利用が困難であった低温の焼却排熱をも回収して発電し、必要な電力を自給できる新たな焼却炉の開発も進めております。
これらを組み合わせまして、日本初のエネルギー自立型の汚泥焼却システムを平成二十七年度以降、新河岸水再生センターなど三カ所に、順次導入する予定でございまして、その効果は、合わせて太陽光発電四十二メガワット分の電力量であり、一般家庭に換算すると一万二千世帯の年間電力使用量に相当いたします。
今後も、新たな技術開発を強力に進め、エネルギー対策に積極的に取り組んでまいります。

〇小磯副委員長
谷村孝彦委員の発言は終わりました。(拍手)

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