平成22年第1回定例会 予算特別委員会

20100326_2021〇谷村委員 それでは、質問をさせていただきます。
一昨年のリーマンショック以来の世界同時不況がグローバル社会を席巻しました。今回の金融危機を招いた信用バブルの背景には、投機性を至上視したデリバティブ市場、金融派生商品マーケットの拡大などがあり、その開発には最先端の金融工学が駆使されていたといわれております。まさに金融市場のカジノ化。金融市場でカジノを楽しむように熱中していた人々によって起こされたと指摘をされております。
歴史は繰り返すとよくいわれますけれども、繰り返すべきでない歴史ほどよく繰り返されるわけであります。八十年前の大恐慌、これは前世紀の大恐慌と呼んでもいいと思いますが、そして、今回の世界大不況、この二回の経験で明らかになったことの一つとして、近代、あるいは現代文明における価値基準の喪失が指摘されております。金銭がすべての尺度であり、それ以外の価値基準を持たない。人間の価値基準をどれだけ金銭や利益を手にすることができるかといった経済的能力に専らゆだねていく生き方、ライフスタイル、また、それが文明のトレンド、傾向性となってしまっております。
前世紀初頭のフランスの哲学者、シモーヌ・ヴェーユは、二十世紀前半の本質的な特性は、価値の概念の希薄化、いや、ほとんどその消失とし、価値感情欠乏症と名づけました。二十一世紀が十年目を迎えましても、その状況は全く変わっておりません。
イギリスの歴史家、アーノルド・トインビーは、その著書、「試練に立つ文明」の中で、我々は歴史をして繰り返させるべく運命づけられているのではありません、つまり、我々の努力を通じて、我々の順番において何らかの新しい先例のない変化を歴史に与える道が我々には開かれているのでありますと述べております。
これまで十年余り石原都知事は、絶えず文明工学の視点、文明史観というものを明確に持って、その上でさまざまな都市政策を打ち出し、それを世に問い、着実に推進してこられました。スペインの哲学者のオルテガが、他者との共存が野蛮と決別する文明の絶対要件としましたが、他者性の尊重、あるいは他者性の習慣化こそが今大変重要な視点になっていると思います。いいかえれば、人のために尽くすことによってみずからを輝かせる力、輝かせていく生き方、これを個人でも、地域社会でも、国でも、国際社会でも広げていく、その行動こそが重要であります。
その意味におきまして、東京都では、石原都知事が旗振り役となって八都県市の首都圏サミット、当初は七都県市、間もなく九都県市になりますが、これを早々に立ち上げられ、海外諸都市との連携、国際貢献、そして明確な都市戦略を持って世界先進都市東京の構築を目指してこられました。
具体的には、アジアネットワーク21で海外諸都市の連携を図り、いよいよ始まるキャップ・アンド・トレードを進め、このノウハウを伝えていくことにより国の内外にも貢献し、そして、新たな水ビジネスへの参入によって都市戦略を明確に描いた国際貢献も新たに展開をされようとしております。
現在、国政が混迷をきわめ、日本を取り巻く状況がますます厳しくなる中で、今こそこの十年間の都政の姿がこの国の未来を開く手がかりになると思います。
そこで、知事に、これまでどのような信念で都政運営に当たってこられたのかを改めてお伺いし、そしてさらに政治と行政は今後いかにあるべきとお考えか、ご所見をお伺いしたいと思います。

〇石原知事 おっしゃったとおり、現代における価値観というのは、決して健全なものではないと思います。しかし、やはり市場原理主義というのを標榜する、非常に限られた、非常にセルフィッシュな価値観というものが機軸になって物事が動いているところに大きな混乱を超えた悲劇が到来していると思います。
就任以来、日本の心臓部であり、頭脳部である東京というものを支えるためにも、東京を含めて、日本の現代社会を襲っている危機というものの本質を懸命にとらえまして、東京から日本を支えて、かつ変えるべく努力もしてまいりました。それに当たっては、都民、国民の英知と力を集めて、八都県市やアジアの大都市などとの連帯の中で物事を効率よく解決していく努力もしてまいりました。
人間の非常に営利主義、物欲主義というものがもたらした環境の破壊というものは、本当に我々の存在の舞台である地球そのものを損なおうとしておりますが、ただ、やっぱり私は市場原理主義については批判的でありましたけれども、それが一時流行のようにいわれたこともありますが、あるときテレビを見ておりましたら、非常にしっかりした、高齢の経営者が、四十代のアメリカの若造が--若造といっちゃ申しわけない、四十代の人を。若い経営者が、ファンドマネジャーが来まして、日本の非常に優秀な技術を持つ、ダイヤモンドでいろいろ工作する会社を、売りに出せといって社長に迫ってました。そのときに七十代の社長が、あなたのいうことは全然間違っておる。この会社は株主のためのものじゃない。私は、会社というものは社員のため、社会のためにあるので、君らマネーゲームをやっている人間のためにあるんじゃない。会社の株を売るつもりは全くないといって突っぱねたのを、非常に私は印象的に残っておりますが、やっぱりそうした共通がまだ日本にも残っておりますし、目先の物欲にかわる人間の正当な欲望もあると思いますから、それを満たすべく議会と一緒に努力していきたいと思っております。

〇谷村委員 大変にありがとうございます。
この十年間の都政に取り組んでこられました知事の信念の一端をご披露いただいたわけでございますが、政治をあずかる者には、石原都知事のように、確固たる文明観、歴史観、あるいは思想、哲学、理念が必要でありますし、それらにはもちろん多様性があってしかるべきでありますが、そうしたものに何ら裏づけされることのない政策、近視眼的な政策を掲げるほど今の世界、日本、東京には、実は時間的猶予が与えられているわけではありません。我が国は、少子高齢社会の到来にしっかりとした対応ができないまま、次なる大きな波、人口減少化社会を迎えているわけであります。
欲望の無限拡大、無限解放を容認する近代文明に対し、ローマ・クラブのリポート「成長の限界」が警鐘を打ち鳴らして、既に四十年になります。さきの衆議院選挙では、これに逆行するかのような社会的欲求というものをかき立てるだけかき立てて、マニフェストを掲げた政党が政権をとりました。思想性も哲学性も理念も全く感じられない、浮薄な政策の羅列の行く先は、現在報道されている政権の姿を見れば自明の理であります。政治と金、普天間、八ッ場、すべてぐちゃぐちゃになるだけで、都政でいえば築地市場、新銀行を見れば明らかにこの姿を呈しているわけであります。
石原知事には、ぜひこの一年も力強いリーダーシップで都政をリードしていただきたいと思います。
さて、先ほど東京都の都市連携、国際貢献、都市戦略の三本柱の取り組みについて触れさせていただきました。現在、国でもアラブ首長国連邦のアブダビ首長国での原発受注、原子力発電所の受注の失敗を教訓に--韓国に負けたんですね。フランスでは、韓国に負けたということで大騒ぎになっているようでありますが、今後は国家戦略として位置づけて、官民が一体となって海外での原子力発電所の受注に乗り出すというふうにいわれております。
地球温暖化への関心の高まりを受けて原子力ルネサンスというそうでありますけれども、新たな水ビジネスでは一千三百万都民に大規模な水道事業を運営してきた東京水道の持つノウハウ、また、高い技術を持って都市戦略として世界に乗り出す。ともに新しい分野であり、大変にすばらしいことであると思います。
そこで、東京水道が世界に誇る水道技術の一つに水質管理があります。この最新技術を活用した高度浄水処理による安全でおいしい水の供給がいよいよ私の地元東村山浄水場でもスタートいたします。その結果、東村山を初めといたします広範な多摩地域でこのすばらしい高度浄水処理が飲めるようになるわけでございますが、意外と都民、住民の方々はご自分が飲まれている水道水がどこの浄水場から送られてきているか、ご存じないわけですね。ですから、高度浄水処理が導入される意義に加えまして、その区域についてもぜひお伺いしたいと思います。

〇尾崎水道局長 高度浄水処理は、オゾンによる分解作用や生物活性炭による吸着、分解作用により、通常の浄水処理では十分に対応できない臭気原因物質や有機物などの除去、低減に効果を発揮します。
東村山浄水場の高度浄水施設は、この三月に完成、通水し、四月上旬には全面的に稼働いたします。本浄水場から供給される水道水は、今回、利根川水系の原水を全量高度浄水処理することにより、従来から水質が良好である多摩川水系の水と合わせ、より一層おいしい水となります。
東村山浄水場は、東村山市を初め北は清瀬市から南は多摩川を越えた日野市や稲城市まで、多摩地区十七市町と練馬区の一部を含む広範な地域を給水区域とし、約二百万人のお客様に水道水をお届けしております。利根川水系の原水を全量高度浄水処理して、これだけ広い地域のお客様においしい水をお届けするのは当局としては初めてでございます。

〇谷村委員 多摩の人口は四百万人でございますので、一部練馬区が入りますけれども、多摩都民の約半分の地域に及ぶわけであります。東京水道に対する都民の皆様からの評価は着実に上がっております。
そこで、アピールも含めまして、安全でおいしい水の供給に向けた施策の推進について、尾崎水道局長のご決意を改めてお伺いいたします。

〇尾崎水道局長 今回の東村山浄水場の高度浄水施設の完成により、利根川水系のすべての浄水場に高度浄水処理が導入されることになります。今後とも、より一層安全でおいしい水をお客様にお届けするため、平成二十五年度末までに利根川系取水量の全量を高度浄水処理できるよう、金町、三郷、朝霞の各浄水場における高度浄水施設の拡充工事を着実に推進いたします。
あわせて、カルキ臭の原因の一つとなっている残留塩素の低減化に向けた取り組みや直結給水方式の普及促進、貯水槽水道の適正管理に関する指導、助言など、より安全でおいしい水の供給のための対策を推進してまいります。
さらに、こうした取り組みについて幅広くお客様に理解していただけるよう、効果的な広報を展開いたします。
これらの施策を積極的に推進し、局を挙げて安全でおいしい水の供給に向け全力で取り組んでまいります。

〇谷村委員 ありがとうございます。世界に誇る東京水道としてぜひこれからも取り組みを進めていただきたいと思います。
次に、今まさに卒業式のシーズンであります。ここで突然ですが、大原教育長、現在、卒業生の間で卒業ソングとして一番歌われている曲は何かご存じですか。質問ではありませんで、オリコンで四年連続一位となったのが、三人組のロックバンド、レミオロメンの「三月九日」という曲であります。三日前の三月九日に放映されましたNHKの「クローズアップ現代」によれば、この曲を卒業式で合唱する学校も多くあるようであります。
「新たな世界の入口に立ち 気づいたことは一人じゃないってこと 瞳を閉じればあなたが まぶたのうらにいることで どれほど強くなれたでしょう あなたにとって私もそうでありたい」こういう歌詞でありまして、人生の旅立ちを迎える者同士のぬくもりのある目線が共感を呼んでいるとのことであります。
昨年の世界全体の失業者数は記録史上最悪となる二億一千九百万人以上に達するといわれておりますが、我が国においても状況はかなり深刻であります。二〇〇九年の都内の完全失業率は四・七%、七年ぶりの上昇となっているというふうにお伺いいたしました。特に若い世代に及ぼす影響はとても大きく、社会人としてスタートラインに立つ時期から働く場所が得られなかったり、突然に職を失うということは、経済的困窮もさることながら、自分が社会で必要とされていないことへのショックや将来への不安が募り、ひいては生きる希望まで打ち砕かれてしまう結果を招きかねないわけであります。
都は、高校新卒者の厳しい就職環境を受け、過日の我が党の代表質問に対しまして、特別相談会の実施や東京しごとセンター、またしごとセンター多摩で新卒緊急応援窓口を設置するとご答弁されました。卒業後の支援体制もできたことを高く評価するものであります。
そこで、今まさに卒業を迎えつつある高校生の未内定者に対する支援の取り組み内容について改めてお伺いをいたします。

〇前田産業労働局長 高校生の未内定者に対します就職支援につきましては、去る三月九日と十日に、高校、大学の卒業予定者等も対象とする特別相談会を実施したほか、来週十五日には飯田橋のしごとセンターとしごとセンター多摩に新卒緊急応援窓口を新たに設けまして、個別カウンセリングを中心としたきめ細かい支援を行い、早期の就職に結びつけてまいります。
また、しごとセンターで今月実施予定の各種グループワークやセミナーにつきましては、高校生の未内定者が優先的に受講できるよう新たに特別枠を設けることといたしました。
こうした取り組みの実施に当たりましては、未内定者の利用が促進されますよう、各高校の協力を得て、一人一人に新卒緊急応援窓口やサービスの内容を確実に周知してまいりたいと思います。

〇谷村委員 大変にすばらしい新たな取り組みであります。
今まさに高校の卒業未内定者の支援に全力を挙げていただきたいと思いますけれども、こうした厳しい就職状況はしばらくまだ続くと思います。今後は卒業後だけでなく、在学中からの支援も新たに必要ではないかというふうに思います。特に年が明けても就職が決まらない生徒、あるいは学生さんにとっては、既に幾つか会社訪問をして、それでも内定をかち取ることができない。友達は新しい進路がどんどん決まっていく。一人残されたような孤独感の中で卒業式までという一つのデッドラインが日々日々身近に迫ってくる。こういう状況に置かれるわけであります。
各学校においても全力を挙げていただいているとは思いますが、こうした高校生に対してこのラストスパート期間、高校内定者の状況というのは十月末と年末に二度発表になりますけれども、その後というのは一切の完了のすべての内定率が出るわけですが、年が明けて卒業式までのラストスパート期間にこそ、卒業してからではなく、東京しごとセンターやしごとセンター多摩のヤングコーナーやジョブカフェで持てる力をすべて発揮していただいて、さらなる支援をしていただく必要があると思いますが、見解をお伺いします。

〇前田産業労働局長 高校生の就職支援につきましては、学校現場とハローワークが連携して実施しているところですが、現下の非常に厳しい雇用情勢のもと、年が明け、卒業を間近に控えても内定を得ていない高校生の支援に当たっては、こうした取り組みに加えまして、東京都しごとセンターのノウハウも最大限に活用して、サービスの選択の幅を広げるということが重要と考えております。
このため、今年度はこの三月から緊急支援を実施しているところでございますが、来年度は今後の雇用情勢も勘案しつつ、年明け一月にも新卒予定者の特別応援窓口をしごとセンターとしごとセンター多摩に開設したい、こう考えております。
また、窓口では個別担当者制によるカウンセリングにより、未内定者の心のケア、モチベーションのアップなども図りながら、きめ細かな支援を行ってまいります。さらに、自己PRや面接対策などの実践的なセミナーも組み合わせ、高校生の就職を支援してまいります。
一方、在学中の高校生の支援の実施に当たりましては、効果的なものとしていくため、できるだけ早期に関係機関による検討組織を立ち上げ、その中で実施方法や役割分担、支援内容等について検討してまいります。

〇谷村委員 明快なご答弁をありがとうございます。
さて、受け入れ側の体制は大丈夫だとのことでありますが、ただいまご答弁いただきました、しごとセンターと各高校が密接に連携した新たな支援の仕組みづくりにつきまして、早急に検討組織を立ち上げて、ぜひご検討を進めていただきたいと思います。
また、しごとセンターの機能をより発揮していくためには、本来このラストスパート期間ではなく、就職期間に入る前の段階から職業意識の涵養やみずからのキャリアの方向性を固めておくことも重要であります。
この点につきましては高校のキャリア教育の中で取り組まれてはおりますけれども、就職活動を行う高校生に対してはより早い時期から東京しごとセンター、あるいは外部機関を活用して、就職指導を強化していく必要があると考えますが、所見をお伺いします。

〇大原教育長 現下の大変厳しい雇用状況にあっては、就職を希望する高校生に対して、校内における面接指導や小論文指導などの就職指導にとどまらず、外部機関との連携を強めた就職指導を行っていく必要があると認識しております。
こうしたことから、既卒者だけでなく、新卒者も対象とした東京しごとセンターを活用し、就職に関する一貫したワンストップサービスを高校生に提供することは最も有効な方策の一つと考えられます。この春の卒業生でまだ就職が決まっていない生徒や来年度以降緊急な支援が必要な就職を希望する生徒に対しては、今産業労働局長から話がございました東京しごとセンターが設置いたします緊急応援窓口等を積極的に活用するよう各学校を指導してまいります。
また、今後は都立高校の就職を希望する三年生だけでなく、一、二年生に対しても東京しごとセンターの事業を広く紹介し、長期休業期間や放課後、土曜日などにおきまして、積極的に参加することを促すなどいたしまして、学校における就職指導を強化してまいります。

〇谷村委員 明快なご答弁ありがとうございます。
先ほどのレミオロメンの「三月九日」という曲ではありませんが、自分のために、自分一人のためにいろいろな人が応援してくれている。「新たな世界の入口に立ち 気づいたことは一人じゃないってこと」これを実感して、地域や社会で貢献していく若き社会人を数多く輩出していっていただきたいと思います。
次に、昨年来、新聞報道等で大きな問題となっております国民健康保険組合、いわゆる国保組合について質問いたします。
この国保組合は、食品販売業や建設工事業などの同種、同業の方たちが加入する国民健康保険であります。都が認可している国保組合は全部で二十二あり、相互扶助の精神に基づき、高い保険料収納率や保健事業による医療費適正化への取り組みなど、保険者機能を発揮して運営されているわけであります。
ところが、最近、とんでもない事件が起こりました。全国建設工事業国民健康保険組合、いわゆる全建国保において、無資格加入や偽装加入があったとの報道がなされました。報道によりますと、徳島県の支部では企業を退職した年金生活者が、市町村国保の高い保険料を免れるため、建設工事業に従事していないにもかかわらず、従事しているとして、この組合に加入しているとのことであります。
また、北海道の支部では、本来協会健保に加入することが義務づけられている法人が、社員をグループ分けして架空の個人事業所の従業員にしたり、届け出の事業所名から株式会社や有限会社の表記を外すなどして、偽装加入しているとのことであります。この組合には平成二十年度だけでも約二百三十七億円もの国庫補助金が交付されているわけでございまして、つまりは、無資格者の医療費に国民の税金が不当に使われていることになるわけであります。
そこで、都は、指導監督官庁として、今回の無資格加入、あるいは偽装加入問題について、どのような対応をしているのか、まずお伺いをいたします。

〇安藤福祉保健局長 全国建設工事業国民健康保険組合は、五十九支部に約九万人の組合員が所属する全国組織でございますが、東京に本部を置いているため、都が認可庁として指導、監督を行っております。
事件発覚後、当該組合に対しては、厚生労働省と合同で指導検査を実施し、さらに無資格加入問題の実態を把握するため、組合員全員の資格について調査するよう指示したところであります。
今後も無資格加入問題の是正に向け、国と協議をしながら指導してまいります。

〇谷村委員 昨年十一月三十日の朝日新聞の報道につきましては、公平を期すために申し上げておきますが、朝日新聞社さんに対して全建総連、全国建設労働組合総連合さんが抗議されておりますし、東京土建さんのホームページ等でも見解と主張が出ておりますので、この記事につきましてはここではあえて触れませんが、平成二十年度の医療費、事務費等及び特定健診等で六十八億円が都の認可している二十二団体に支出されているわけであります。そのうちこの東京土建さんには、都からの補助金のちょうど半分、三十四億円が行っているようでありまして、大変に驚きました。これは今回の質問の本旨とは関係ありませんが、この額に驚いたわけであります。
しかし、今回の全建国保による無資格加入問題について、朝日新聞では、十一月三十日付の報道以外にも何度もこの問題を取り上げておりまして、国民健康保険組合制度、いわゆる国保組合制度についての問題点を幾つか指摘しております。
要約してご説明しますので、知事、ぜひここからお聞きいただければと思いますが、まず一点目ですが、ご存じのとおり、我が国の医療保険制度では会社員の方は健保組合等の被用者保険に入ることになっております。それ以外の方は国民健康保険に入ることになっており、基本的にはどっちに入るかということは選べない制度になっているわけであります。しかし、建設関係者だけでなく、医師、薬剤師、弁護士など、国保組合への加入が認められている一部の人たちだけが、市町村国保と国保組合、どっちに入った方が得か、保険料が安いかという、そういうことで有利な方を選べるという、そういう制度になっているわけであります。
朝日新聞の記事ではわかりやすくまとめておりますので、読み上げますと、自営業者らが加入する市町村国保の保険料は所得などの負担能力に応じてふえるが、国保組合は年齢や家族構成などで一律に決まる。このため、所得が高い人ほど国保組合が有利になりやすい。また、国保組合に比較的裕福な無資格者が流入してくる現実は、ちょっと中略しますけれども、一部の人だけが市町村国保との比較で有利な保険を選べる制度の問題点が浮かび上がってくるというふうに説明しております。これが一点目の問題。
二点目の問題ですが、これは朝日新聞の記事を続けて読みますけれども、日本の皆保険制度は、負担能力が高い人が助け合いに加わることで成り立つ面があるわけであります。多額の公的助成を受ける国保組合の存在は公平を失っており、負担のあり方の見直しが急がれるとありまして、どういうことかというと、結果として、負担能力の高い人が市町村国保から抜けてしまって国保組合に行くということを指摘しているわけであります。この国保組合の存在は、国民皆保険制度の中で公平を失するのではないかとの趣旨であります。
そして三点目に、朝日新聞の記事では、国保組合では保険料を低く抑えたり、入院時に傷病手当を出したりするなど、法定給付を上回るサービスを提供している。この傷病手当というのは現金給付でありまして、法定給付に対し任意給付というのがあるわけですけれども、法律で認められているわけですが、例えば五日以上入院すると、百八十日間を限度に一日四千円から五千円給付される。市町村国保はとてもできない仕組みでありまして、だから今、テレビでよくコマーシャルしておりますのが、民間の医療保険、高齢者の方でも入れる保険が数多くできているわけですけれども、この国保組合ではこういうシステムになっているわけであります。これが三点目。
そして四点目には、こうした健康保険での優位性で加入を促し、その母体となる業界団体、あるいは労働組合への加入も促進しているということであります。朝日新聞では、建設業や造園業などの業界団体が国保組合の運営に関与しており、保険加入者にこうした母体組織への入会も促していることが多い。入会金や年会費によって母体組織の強化にもつながりというふうにいっております。
国保組合によっては、業界団体の母体組織に入らなくても、国保組合に加入できるものもあります。しかし、例えば東京土建さんのように、労働組合に加入しないと、市町村国保より優位な所得の場合でも、国保組合には加入させないという、こういう国保組合もあるわけであります。
そして五点目に、国保組合への加入の際は、資格審査が事実上各国保組合に任されているということであります。朝日新聞では、入会金や年会費によって、母体組織の強化にもつながり、これが資格審査の甘さにつながっているとの指摘もあるというふうに書いてあります。
こうした報道による指摘について、都の認識をお伺いしたいと思います。

〇安藤福祉保健局長 国民健康保険組合は、区市町村の国民健康保険を補完するものとして国民健康保険法に基づき設立される法人であります。法によりまして国保組合の加入資格やその審査方法、給付内容等は、組合みずからが設立の趣旨や経緯、業種の特性などを踏まえて規約等に定めるものとされておりまして、これに基づき、それぞれの組合が適切な運営に努めるものであります。
都といたしましては、国保組合の健全な事業運営が図られるよう引き続き指導してまいります。

〇谷村委員 法律に定められている制度でありますので、都のお立場としての見解もよく理解できるわけでありますが、冒頭にお答えになりました区市町村国保を補完するものとして国保法に基づかれているわけですけれども、むしろ区市町村国保の抜け道になっているのではないかという指摘があるわけであります。
区の国保料は、二〇一〇年度、前年度比で一人当たり六千円以上、今度は大幅に値上げが見込まれております。多摩の市町村でも国保税の値上げが検討されているところもあるわけでございまして、市町村国保に加入しておられる一般の方々からは、ただいまご紹介させていただいた朝日新聞の記事をお読みになって、国民皆保険制度の中で制度設計上大きな疑問が残る、不公平だという声が大変に強いということを、この場をおかりしてお伝えをいたしておきたいと思います。
さて、全建国保による無資格加入問題、あるいは偽装加入問題を受けて、今後の再発防止策についてでありますが、先ほどの朝日新聞で指摘されているような五つの問題点、これを考慮しますと、この組合のほかにも無資格加入や偽装加入があり得るのではないかとの疑念に都として明確に答えていく必要があると思います。毎年毎年七十億円前後の都税がこの組合に支出をされているわけでありますから、当然のことであります。
問題となった国保組合は、加入資格の確認を業界団体が発行している証明書によって行うなど偏りがあったようでございます。加入資格の確認はもっと厳正に行うべきであります。また、国保組合によっては、定期的に資格調査を行い、みずから適正化を図っている国保組合もあるというふうに伺っております。都はこのような取り組みをすべての国保組合に指導すべきであり、再発防止策を講じるべきであると思いますが、見解をお伺いします。

〇安藤福祉保健局長 組合員の加入資格を確認いたしますことは、国民健康保険を運営する保険者にとって最も基本的かつ重要な責務であります。都は、毎年、すべての国民健康保険組合に対して指導検査を実施しておりまして、平成二十二年度は、組合みずからが資格確認の適正化に取り組むよう重点的に指導してまいります。

〇谷村委員 ぜひ重点的に指導していただきたいんですが、ここが問題なんですけれども、毎年毎年すべての国保組合に対し指導検査を実施しているということなんですが、東京都の担当者って三人しかいないんです。三人。例えば都内に七百人しかいない国保組合も、あるいは、例えばですけれども都内に二十万人いらっしゃる東京土建さんにも、この三人で一日しか行かないわけです。これで本当にきちんとした指導検査ができるのかという疑問も残りますので、ぜひ指導検査体制の強化、指導検査の公平性の確保を図っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
続きまして、多摩北部地域の都市基盤整備について質問させていただきます。
平成二十年の第四回定例会での本会議一般質問におきまして、東村山駅周辺の踏切の連続立体交差化について質問をさせていただきました。昨年、平成二十一年四月に、見事国土交通省によります新規着工準備採択をかち取っていただきました。
そこで、道家技監に、西武新宿線東村山駅付近の鉄道連続立体交差化に向けた最近の取り組み状況についてお伺いをいたします。

〇道家東京都技監 連続立体交差事業は、さまざまな面で効果の高い事業であります。
西武新宿線東村山駅付近については、交差する都市計画道路東村山三・三・八号線が第三次事業化計画の優先整備路線であることや、まちづくりへの取り組みの熟度が高いことなどから、昨年度、連続立体交差事業の事業候補区間に位置づけ、今年度、新規着工準備箇所として国に採択をされました。現在、西武鉄道と連携して構造形式や施工方法の検討を行っており、国との協議を始めたところでございます。
今後とも、必要な財源の確保に努め、地元市や鉄道事業者と連携して、事業化に向け着実に取り組んでまいります。

〇谷村委員 昨年の国土交通省によります新規着工準備採択につきましては、全国で三カ所だけだったわけでありまして、そのうちの一つが東村山駅付近の連続立体交差事業であったわけでございまして、ご尽力に改めて感謝をいたしたいと思います。
次に、新青梅街道の東大和市から武蔵村山市を通り瑞穂町に向かう東西六・七キロメートル区間ですが、昨年、交通量調査なども行われ、本区間の事業の進め方などについて都と地元市の三市町で構成される行政連絡会で議論されたということであります。
そこで、新青梅街道の事業化に向けた取り組み状況について改めてお伺いをいたします。

〇道家東京都技監 新青梅街道は主要な骨格幹線道路でありまして、立川東大和線から西側の延長六・七キロメートルの区間を第三次事業化計画における優先整備路線に位置づけております。このため、都は、沿線の東大和市、武蔵村山市、瑞穂町と設置いたしました行政連絡会で意見を聞きながら、事業の進め方などについて検討を行ってまいりました。
この結果、全体を五区間に分け、南北方向の幹線道路との交差点における交通混雑の早期解消を図るため、まず立川東大和線と交差する区間、次に瑞穂あきる野八王子線と交差する区間、続いて八王子武蔵村山線と交差する区間の順に事業化することといたしました。
現在、事業化の準備を進めるため、全線にわたり基準点測量を実施しております。

〇谷村委員 大きな期待が大変周辺住民から高まっているところでございます。そこで、東大和市内及び武蔵村山市内における今後の事業化に向けた取り組みについてお伺いをいたします。

〇道家東京都技監 東大和市及び武蔵村山市内の新青梅街道、延長五・三キロメートルのうち、立川東大和線と交差する一・一キロメートルの区間については、来年度、現況測量を実施し、用地測量にも着手する予定であり、今月末に地元説明会を開催いたします。
残る四・二キロメートルについては、三区間に分け、関連する市施行の区画整理事業の進捗状況などを踏まえ、八王子武蔵村山線と交差する一・五キロメートルの区間から、順次、事業化に向けた準備を進めてまいります。
今後とも、必要な財源の確保に努め、地元市と連携し、早期事業化に取り組んでまいります。

〇谷村委員 ありがとうございます。
次に、多摩都市モノレールの延伸の大前提となります多摩都市モノレール株式会社の経営状況について質問をいたします。
私は、都議会公明党の代表質問、また予算特別委員会で、多摩都市モノレールの建設時の過大な投資負担を軽減するために、都から多摩都市モノレール株式会社に対し財政支援をするべきだと訴えさせていただきました。それが平成二十年度には、その相当分に当たります二百九十九億円の財政支援が実施されたわけであります。その後は財政状況も好転したと伺っておりますが、経営の改善状況についてお伺いをいたします。

〇河島都市整備局長 多摩都市モノレールは、多摩地域の拠点を結ぶ交通ネットワークの一つとして、重要な公共交通機関でございます。
同社の経営は、他の軌道系の三セクと異なり、車両基地用地の取得に係る負担から、資金収支の悪化が課題となっておりました。このため、平成二十年度に会社が経営安定化計画を策定するとともに、都や沿線市等が、会社の最大限の経営努力を前提に支援を行った結果、同年度の決算で一億三千万円の初めての経常黒字を達成いたしました。
今年度は、景気低迷等の影響を受け、多くの鉄道会社で収益が落ち込む中、会社はこの経営安定化計画に基づく増客増収への取り組みや経費削減等の努力により、上期において七千五百万円の黒字を確保することができました。下期も乗客数の増加が見込めず厳しい状況でございますが、都としては、今後も会社に対し、経営安定化計画の着実な実施を求めるとともに、黒字確保に向けて適切な指導を行ってまいります。

〇谷村委員 ありがとうございます。
最後に、一昨年の四月三十日、上野動物園のパンダのリンリンが亡くなりました。北京オリンピックが開催された年でもあり、中国からの輸入食品の安全性の問題等もあり、パンダが政治的に左右されそうな時期と残念ながら重なってしまいました。私ども公明党は一貫して、早く上野動物園にパンダを受け入れてほしいということで、控室の入り口にはパンダの縫いぐるみを置かせていただいております。
今回、上野動物園にパンダを受け入れるという結論に至ったことは、子どもたちに夢を与えるとともに、生き物の大切さを伝える意味でも大変に喜ばしいことであります。上野動物園で再びパンダを受け入れる意義について、都としてのご見解をお伺いして、私の質問を終わります。

〇道家東京都技監 パンダは希少動物の象徴であり、世界自然保護基金、WWFのシンボルマークもまさにジャイアントパンダであります。その体の模様や愛くるしいしぐさなどから人気のある動物でもあります。
恩賜上野動物園は、これまでパンダを三十六年間飼育してきた豊富な経験と技術を持っておりまして、これらの経験を生かし、中国との共同研究を行い、飼育繁殖技術を向上させ、生息地の保全などの取り組みを支援いたします。
また、上野動物園には、多くの子どもたちから、パンダを見たいという声が寄せられてきました。パンダを飼育、展示し、生息地の現状などについて解説することで、希少動物保護の大切さを伝える教育効果も期待できるわけでございます。
こうしたさまざまな意義があることから、再びパンダを導入することとし、日本を代表する動物園として希少動物であるパンダの保護に貢献してまいります。

〇藤井副委員長 谷村孝彦委員の発言は終わりました。(拍手)